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PERに関する思考整理、あるいはマンション投資について


PER(株価収益率)は株式投資の重要指標だが、株式投資をやっているわけでもないので身体化が全く進まない。 3連休だったので、PERについての個人的な疑問を整理した。当然、本職の人やもっと詳しい人から見たら指摘だらけのはずだが、優しい目で見てやってほしい。

Q1: PERとは何か?その意味と解釈は?

PER(Price-to-Earnings Ratio)は株価を1株当たりの利益(EPS)で割った値である。

PER = 株価 ÷ 1株当たりの利益(EPS)

<<<<<<< HEAD PERは、理論上、その企業の現在の利益水準が続くと仮定した場合に、投資額を回収するのに何年かかるかを示している。つまり、PERは市場が企業への投資をどれくらいの時間軸で回収したがっているかを表す尺度と言える。

PERは、その企業の現在の利益水準が続くと仮定した場合に、投資額を回収するのに何年かかるかを示している。

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例:株価1,000円、EPS50円の場合、PER = 1,000円 ÷ 50円 = 20 → 現在の利益水準が続けば、20年で投資額を回収できることを意味する。

しかし、実際のPERの解釈はより複雑で、市場の将来に対する期待が織り込まれている。

このように、PERは単なる数学的な回収期間ではなく、市場の期待する「実質的な」回収期間を表している。 言いかえると、PERは市場が企業からの投資をどれくらいの時間軸で回収したがっているかを表す尺度とも言っても差し支えないのではないか。

また、PERの高低は一概に良し悪しを判断できず、投資家の戦略や市場の状況によって評価が異なる。 つまり、PERを解釈する際は、単に数値の高低だけでなく、その背後にある市場の期待や企業の成長性を総合的に考慮する必要がある。

Q2: PERが低い企業は必ずしも良い投資先とは限らないのか?

PERが低いと投資回収期間が短くなるため、一見有利に見える。 しかし、投資家は現在の利益だけでなく、将来の成長も考慮して株価を評価している。

例えば、以下の2つの企業を比較してみる。

現在のEPSが高い企業Aの方が直感的には儲かりそうである。 一方で、現在のEPSが低いためPERは高い企業Bは、高成長が実現すれば数年後には企業Aを上回る利益を生む可能性がある。

このように、PERは市場の期待する投資回収期間を反映するが、それは単純な現在の利益だけでなく、将来の成長期待も含んでいる。

Q3: なぜ成熟産業のPERは低くなるのか?

成熟産業のPERが低くなる理由には、複数の要因がある:

  1. 低成長:安定しているが、高成長が見込みにくい
  2. 低リスク:ビジネスモデルが確立され、リスクが比較的低い
  3. 投資回収の見通し:安定した収益により、投資回収の見通しが立てやすい
  4. 高い資本効率要求:投資に対する高いリターンが求められる
  5. 再投資機会の限定:新たな成長機会への再投資が限られている
  6. 低い市場期待:驚きのある成長や革新が期待されにくい
  7. 激しい競争:利益率の大幅な向上が難しい

これらの要因により、成熟産業では安定性と予測可能性が高い一方で、高成長の期待が低くなる。投資家は確実性が高いため、長期の回収期間を必要とせず、要求するリターンも比較的低くなる。これらが組み合わさって、低PERにつながっている。

(おまけ)マンション投資とPER

PERの概念は、マンション投資にも直接的に応用できる。マンションのPERは、マンションの価格を年間家賃収入で割ったものとして計算される。

マンションのPER = マンションの価格 ÷ 年間家賃収入

例えば、5,000万円で購入できるマンションの年間家賃収入が250万円なら、PERは20(5,000万円 ÷ 250万円)となる。 これは、現在の家賃水準が続くと仮定した場合、投資額を回収するのに20年かかることを意味する。

先ほど説明したPERの高低の意味、成熟産業との関係踏まえて、マンション投資をPERの視点で解釈してみる。 高PER物件は成長期待が高く、低PER物件は安定性が高いという点で、株式市場の高PER株と低PER株に類似しているはずだ。

高PER物件

この高PER物件の例は、Q1で説明した「高PERの意味」と「市場の期待する実質的な回収期間」の概念を反映している。表面上のPERは40(40年での回収)だが、市場はそれほど長く待つつもりはなく、将来の急速な価値上昇を期待している。これは、Q2で説明した高成長企業の例(企業B)と類似している。

低PER物件

この低PER物件の例は、Q3で説明した「成熟産業のPERが低くなる理由」を不動産市場に適用したものだ。安定した立地と需要は、成熟産業の「低リスク」「安定した収益」「低い市場期待」に対応している。また、投資回収の時間軸がほぼPERが示す年数(20年)に近いという点は、Q1で説明した低PERの特徴と一致している。