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『顧客起点の経営』を読んだ


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構造は共通ですが、実際の経営においては「顧客の行動と心理の関係」が視界に入っていない場合がほとんどです。

例えば、四半期末の売上達成を目指して 20%値引きの販促を意志決定する際などに「対象とすべき顧客は誰なのか? なぜ 20%値引きに魅力を感じると思うか? この値引きで購入してくれたあと、顧客の行動はどう変わるか? この値引きを知った、まだ顧客になっていない潜在的な新規顧客はどう感じるか?」などはあまり議論されません。

経営の対象と、期待する財務結果( 売上、利益、費用)だけの議論に終始して意志決定されていることが見受けられます。

2/

経営対象と財務結果をつなぐ因果関係として、顧客の心理と行動を可視化することで初めて、売上増への投資の優先順位と費用を抑えるために削減すべき投資が明確になり、継続的な収益性の向上が可能になるのです。

3/

顧客心理と顧客行動の関係を可視化し、経営と組織全体に実装することで、投資対効果を高め、収益性を向上することができる。

顧客心理と行動の関係性が見えないままの投資は、顧客行動の変化をただ期待しながら暗闇に投資することになり、費用だけが確実に積み上がる。

4/

合計値、平均値でしか捉えていない不特定多数の顧客群の中で、自社プロダクトをすでに購入した顧客は何人か。

なぜ、購入してくれたのか。

まだ購入していないが、今後購入しうる顧客は何人いて、その理由は何か。

一方で、購入しそうにない顧客は何人いて、どうすれば購入してくれるのか。

一度は購入したけれど買わなくなった、つまり離反した顧客は何人いて、その理由は何か。

これらの質問に答えずして、経営( HOW)が、収益性を高めることが困難であることは自明です。

5/

うまくいかなかった場合、手段手法が問題なのか、それとも接触すべき顧客が間違っていたのか、そもそもプロダクトの便益や独自性が弱かったのか等々、失敗の要因は無限に挙げられます。

それらを確かめようがないので、目の前にある結果として「施策を打ったが成果が上がらなかった」場合は、投資を打ち切るという対応をするしかありません。

間違っていたのは顧客戦略で、手段手法自体は有効だったとしても、その時点で手法が悪かったと結論付けてしまい、投資は中止され、何の学習も残りません。

6/

組織の形態、開発戦略、営業戦略、人材戦略、生産調達戦略、そしてマーケティングやカスタマーサービスも、すべては、新しい価値の実現、すなわち顧客戦略の実現手段です。

そもそも顧客戦略が明確になっておらず、組織内に共有されていないと、顧客と顧客に提供すべきことの優先順位を正しくつけることができません。

すると各部門は、それぞれの専門性や機能を突き詰めることしかできず、縦割り化、サイロ化が進みます。

その状態のまま組織が肥大化し続ければ、全体としてまとまりません。

この問題は組織課題として扱われますが、顧客戦略を組織内で可視化、共有化することで解決できるのです。

7/

複数の顧客戦略を常に3‐5種類ほど実現しつつ、翌年や翌々年に投資すべき新たな顧客戦略を開発し、検証し続けることで、一度も成長鈍化することなく2年以上継続して右肩上がりの成長が達成できたのです。

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投資優先順位は、それぞれに特有な次の3つの要素によって決めることができます。  その顧客戦略の、 1 潜在的規模 ─ 達成可能な最大顧客数( 獲得可能な顧客数) 2 LTV※ と実現速度 ─ LTVの大きさとその実現期間( 顧客の獲得効率と、短期・中期・長期の期間収益性) 3 実現可能性 ─ 手段手法( HOW)の存在と実行

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重要なのは、N1の目的を「その一人の顧客が価値を見いだす可能性のあるWHAT( 自社プロダクトが提供し得る、訴求し得る便益と独自性)を見つける」と定めることです。

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一般顧客であれば、ロイヤル化していただくには何が必要か。

離反顧客であれば復帰していただくには、認知未購買顧客や未認知顧客であれば初購入していただくには、といった形でセグメントごとに明確な目的を持ってヒアリングすることが最重要です。

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2 の離反からの復帰ポテンシャルが非常に大きいと考察できます。

この離反している顧客層へのメニュー認知を強化すること、すなわち「ロイヤルホストに来店したことがあるが、現在の来店頻度は低く、新しいメニュー提案を期待している顧客層( WHO)」に対して、「毎月の具体的な新メニュー提案( WHAT)」という組み合わせの顧客戦略が見えるのです。

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顧客行動データを軸にした企画は、競合や社会環境の動きによって常に陳腐化されていくのです。

できることは、このような過去の顧客行動データに基づいて判断した企画は素早く実行することです。

社内や外部を巻き込んで分析し、議論し、熟考し、時間をかければかけるほどに陳腐化し、的外れになります。  それよりも、本質的で持続性のある事業成長につながる戦略として目指すべきは、今、目の前のマーケットの顧客の心理と行動を理解し、素早く顧客戦略を構築し、それを実現する手段手法を企画・実施し、PDCAサイクルを回していくことです。

そして、この一連が実現可能な体制を組織に内製化することです。

これが、顧客起点の経営改革です。

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投資対効果が良い場合も悪い場合も、強化改善のポイントがWHO( 顧客選定)なのか、WHAT( プロダクト便益と独自性の選定)なのか、HOW( 顧客へのリーチ方法、便益と独自性の表現、体験方法)なのか、それらの組み合わせの問題かを検証し、顧客戦略とそれを実現する手段手法の組み合わせを継続的に強化改善し続けることが重要です。

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通常、新規顧客の獲得、既存顧客の維持や育成に直接的に関わるのは営業、開発、販売促進、マーケティングなどですが、それ以外の間接部門も無関係ではありません。

間接部門であっても、それぞれの活動は、顧客戦略を通じて新規顧客の獲得、既存顧客の維持と育成に結び付き、他社にはできない価値を創造しているのです。