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『イノベーション・オブ・ライフ』を読んだ


そのときの抜粋メモです。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

1/ 誘因(インセンティブ)と動機づけ)モチベーション)

わたしはなにも、不幸な仕事の根本原因が金銭だとは言っていない。 そうではない。 問題が起きるのは、金銭がほかのどの要素よりも優先されるとき、つまり衛生要因は満たされているのに、さらに多くの金銭を得ることだけが目的になるときだ。

わたしたちが最も陥りやすい間違いの一つは、それさえあれば幸せになれると信じて、職業上の成功を示す、目に見えやすい証に執着することだ。 もっと高い報酬。もっと権威のある肩書き。もっと立派なオフィス。 こうしたものは結局のところ、あなたが職業的に「成功した」ことを、友人や家族に示すしるしでしかない。 だが仕事の目に見えやすい側面にとらわれたとたん、ありもしない曇気楼を追いかけた、わたしの何人かの同級生と同じ道をたどる危険にさらされる。 今度昇給すればとうとう幸せになれると、あなたは思うかもしれない。 だがそれは雲をつかむようなものだ。 動機づけ理論は、ふだん自分に問いかけないような問題について考えよと、わたしたちを諭している。 この仕事は、自分にとって意味があるだろうか? 成長する機会を与えてくれるだろうか? 何か新しいことを学べるだろうか? だれかに評価され、何かを成し遂げる機会を与えてくれるだろうか? 責任を任されるだろうか? これらがあなたを本当の意味で動機づける要因だ。 これを正しく理解すれば、仕事の数値化しやすい側面にそれほど意味を感じなくなるだろう。

2/キャリアにおける創発的戦略と意図的戦略

どちらを選ぶべきかは、自分が道程のどこにいるかによって決まる。

あなたの求める衛生要因と動機づけ要因の両方を与えてくれる仕事が、すでに見つかっているなら、意図的な手法をとるのが理にかなっている。 あなたははっきりした目標をもち、いまの感触からすると、その目標には努力して達成する価値があると思っている。 予期されない機会に合わせて戦略を修正することは忘れて、意図的に設定した目標をどうやって達成するかに、思考を集中しよう。 反面、こうした条件を満たすキャリアがまだ見つかっていない人は、道を切り拓こうとする新興企業のように、創発的戦略をとる必要がある。 別の言い方をすると、こういう状況にあるときは、人生で実験せよということだ。 一つひとつの経験から学びつつ、戦略を修正していく。 これをすばやくくり返すのだ。

これと思う仕事が見つかるまで続けよう。

3/ 家族への投資

人生のなかの家族のという領域に資源を投資したほうが、長い目で見ればはるかに大きな見返りが得られることを、いつも肝に銘じてなくてはならない。 仕事をすればたしかに充実感は得られる。 だが、家族や親しい友人と育む親密な関係が与えてくれる、ゆるぎない幸せに比べれば、何とも色あせて見えるものだ。

家族とジョブ理論

お互いが自分の与えたいもの、相手が求めているはずだと思いこんでいるものを与えることなのだ。 「ねえ、このイリジウム携帯電話は、絶対にきみの気に入るはずだよ!」 わたしたちはだれしも、伴侶がどんな用事を片づけようとしているかを理解しようと心を砕く代わりに、伴侶が求めているものを、こうだと勝手に決めつけがちだ。

スコットとバーバラのような行き違いは、世界中の家庭で日々数え切れないほど起きている。 わたしたちは自分が何を求めているかを考え、伴侶も同じものを求めているはずだと思いこむ。 スコットはたぶん、職場で大変な一日を過ごしながら、手伝ってくれる人がいればいいのにと思ったのだろう。 だから家に帰って、バーバラを手伝った。 よかれと思ってしたことが、実は見当違いということはよくある。 夫は献身的な自分に酔い、自分が与えているものに気づきもしないといって、妻を自己中心的と決めつける。 もちろんその逆もある。 これは、企業のマーケティング担当者と顧客の間によく見られる行き違いと同じだ。 妻のためを思ってどんなに尽くしても、妻が片づけようとしている用事に目を向けない限り、夫婦の関係に幸せを求めようとする取り組みは挫折し、混乱するだけだ。

片づけるべき用事のレンズをとおして結婚生活を見れば、お互いに対して最も誠実な夫婦とは、お互いが片づけなくてはならない用事を理解した二人であり、その仕事を確実に、そしてうまく片お互いが片づけなくてはならない用事を理解した二人だとわかる。 この気づきは、わたしに計り知れない影響をおよぼした。 妻が片づける必要のある用事を心から理解しようとすることで、妻への愛情がますます深まる。 妻もおそらく同じように思ってくれていることだろう。 これに対して離婚は、自分の求めるものを相手が与えてくれるかどうかという観点から、結婚生活をとらえていることに、原因の一端があることが多い。 与えてくれない人はお払い箱にし、別の人を探すという考え方だ。

愛する人に幸せになってほしいと思うのは、自然な気持ちだ。 難しいのは、自分がそのなかで担うべき役割を理解することだ。 自分の一番大切な人たちが何を大切に思っているかを理解するには、彼らとの関係を、片づけるべき用事の観点からとらえるのが一番だ。 そうすれば、心からの共感を養うことができる。 「伴侶がわたしに一番求めているのは、どんな用事を片づけることだろう?」と自問することで、適切な視点をもって、ものごとを考えられるようになる。 関係をこの観点からとらえれば、ただ漠然と自分のなすべきことを憶測するより、ずっと明確な答えが得られるはずだ。 ただし、伴侶があなたに片づけてほしいと思っている用事を理解するだけではだめだ。 その用事を実際に片づける必要がある。 時間と労力を費やし、自分の優先事項や望みを喜んで我慢し、相手を幸せにするために必要なことに集中するのだ。 また子どもや伴侶にも、他人に献身的に奉仕する機会を積極的に与えよう。 相手のために一方的に何かを一犠牲にすれば、相手との関係を疎ましく感じるようになると思うかもしれない。 だがわたしの経験から言うと、その逆だ。 相手のために価値あるものを犠牲にすることでこそ、相手への献身が一層深まるのだ。

家族で文化を築く

文化は意識的に築くこともできるし、知らず知らずのうちに生まれることもある。 家族全員が従うべき明確な優先事項を定めた家庭文化をもつには、優先事項を積極的に文化に組みこまなくてはならない。 文化はいま説明した手順で構築できる。 自分の家族にもたせたい文化を形成しなくてはいけないし、これについては早いうちから考え始める必要がある。 家庭に思いやりの文化を取り入れたいなら、子どもが解決策の一つに思いやりが含まれる問題に初めてぶつかったとき、その解決策を選ぶよう手助けし、それから思いやりを通じて成功できるよう手を貸してやろう。 また子ともが思いやりの選択肢を選ばなかった場合は、そのことをたしなめ、なぜ選ぶべきだったかを説明する