『良い戦略 悪い戦略』を読んだ
「エンジニアリング組織論への招待」、「超入門 失敗の本質」に引き続き、先月からのテーマにしていた、組織やチームについて考えるために巷で盛り上がっている「良い戦略、悪い戦略」を読んでみました。
良い戦略、悪い戦略
もう少し、誰かが目標を決めてくれるポジションから、組織やチームの目標を自分で決めるポジションになったときには、また見えるものが変わってくるかもしれないですが、それは置いといても具体例も豊富で、新しい知識のインプットにはなったかなと思います。
ひとまず、この本でいったん組織やチームについての本は休憩しようかなと!
相手がいない戦略は存在するのか?
強みに注目しがちだが、弱みに対する理解も必要。
また強み、弱みというのは競争する相手がいて初めて存在する概念であるため、自社に閉じた視点では良い戦略は生まれない。(そもそもそれは戦略とは言えないのかもしれない。)
経営戦略に置き直すと、「自社の強みと弱みをみきわめ、状況のチャンスとリスク(あるいは敵の弱みと強み)を評価し、自社の強みを最大限に活かす」ということになろう。
悪い戦略とは?
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空疎である(中身がない)
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重大な問題に取り組まない
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目標と戦略を取り違える
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間違った戦略目標を掲げている
1.空疎である(中身がない)
戦略構想を語っているように見えるが内容がない。 華美な言葉や不必要に難解な表現を使い、高度な戦略思考の産物であるかのような幻想を与える。
2.重大な問題に取り組んでいない
見ないふりをするか、軽度あるいは一時的といった誤った定義をする。 問題そのものの認識が誤っていたら、当然ながら適切な戦略を立てることはできないし、評価することもできない。
テイラーが奨めたのは、単に重要な問題のリストを作ることではないし、もちろん単なる「やることリスト」を作ることでもない。 重要であって、かつ実行可能なことのリストを作るように、とテイラーは助言したのである。 その助言に従ったカーネギーは、最も重要な目標を選び出し、どうやってそれを達成するかについて熟考したにちがいない。 だから気前よく一万ドル払ったのだ。 そこに気づいたとき、フレッャーの言葉が脳裏によみがえってきた。 大学院生だった私に部門の目標、競争優位や弱点、直面する課題などを質問されたとき、日常業務に取り紛れて言わばファイルボックスの下のほうに埋もれていた重要な課題を、彼は上に引っ張り出してきたのだ。
3.目標と戦略を取り違えてしまう
悪い戦略の多くは、困難な問題を乗り越える道筋を示さずに、単に願望や希望的観測を語っている。
4.間違った戦略目標を掲げている
戦略目標とは、戦略を実現する手段として設定されるべきものである。 これが重大な問題とは無関係だったり、単純に実行不能だったりすれば、まちがった目標と言わざるを得ない。
リーダーの仕事
価値のある良い戦略を立てること
パッシェンデールの教訓はいまもヨーロッパで生きている。 たとえばアメリカではモチベーションが重視され、実業家で政治家のロス·ペローが「多くの人はあと一歩というところであきらめてしまう。勝利のタッチダウンまでほんの1ヤードまで来ていながら、最後のひとふんばりが足りないのだ」などと言うと、大勢の人が賛同する。 だがヨーロッパの人々は、「最後のひとふんばり」という言葉を聞くと、パッシェンデールを思い出すのだ。 あの戦いでは、大量の犠牲を出した連合軍にけっしてやる気がなかったわけではない。 彼らに欠けていたのは、有能で戦略的な指揮官だった。 がんばることは人生において大事ではあるが、「最後のひとふんばり」をひたすら要求するだけのリーダーは能がない。 リーダーの仕事は、効果的にがんばれるような状況を作り出すことであり、努力する価値のある戦略を立てることである。
最終ゴール(ビジョン)のための戦略を立てること
CEOや社長を始めとする経営幹部は、一般の社員より多くの権限を持ち、目標設定に関する自由度が高い。 有能なリーダーは場当たり的に目標を追いかけるようなことはせず、どれを優先すべきかを決める。 そのうえで社内の各部署が追求すべき下位の目標を設定する。この下位の目標が戦略目標に相当し、どのような戦略でも遂行の決め手となる。 リーダーになるということは、「誰かが自分の目標を決めてくれる」ポジションから「組織の目標を自分で決める」ポジションに移ることを意味する。 これこそがリーダーとしての課題と言えよう。 **リーダーは、組織としての理想や価値観や期待を表す「努力目標」あるいは「最終目標」と、戦略実行のための「戦略目標」を明確に区別することが望ましい。**たとえばアメリカにとって、自由、正義、平和、安全、幸福は最終目標と位置づけられ、それを実行可能な戦略目標に転換するのが戦略の役割になる。 たとえば「タリバンを倒してインフラを再建する」などは戦略目標に当たる。 最終目標に即して戦略目標を絶えず微調整するのはリーダーの大切な仕事である。
実行可能な戦略を立てること
戦略と聞くと、ある種抽象的なものをイメージしてしまいがちであるが、前述の「空疎な戦略」と近いが、実際には実行可能、行動可能なものでなくてはなりません。
「条件を指定しない限り、技術者は何もできない」というフィリスの慧眼は、組織的に行う仕事の大半に当てはまる。 サーベイヤーの設計チームと同じく、どんなプロジェクトでも状況が完全に解明されているということはめったにない。 このようなとき、リーダーは複雑で暖味な状況を整理して、何とか手のつけられる状況に置き換えなければならない。 だが多くのリーダーがここでつまずいてしまう。 何に取り組めばよいのか暖味なままにして、むやみに高い目標を掲げてしまうことが多い。 「最後の責任は自分がとる」と言うだけでなく、近い目標を設定してチームが動けるようにすることがリーダーの大切な使命である。
ハードワークを課すこと
良い戦略を考えるのは大変だし、多種多様な選択肢の中から正しいもの、良いものを選ぶのは難しい。
つまり、良い戦略を練り上げるためのハードワークを課すしかありません。
相反する要求や両立し得ない価値観の中から選択をすることこそリーダーの仕事であり、それを放棄すことは、悪い戦略を生む原因となってしまうでしょう。
悪い戦略がはびこるのは、分析や論理や選択を一切行わずに、言わば地に足の着いていない状態で戦略をこしらえ上げようとするからである。 その背後には、面倒な作業はやらずに済ませたい、調査や分析などしなくても戦略は立てられるという安易な願望がある。
戦略のカーネル
良い戦略がカーネルだけで成り立っているわけではないが、カーネルが間違っていると巻き戻しは効きません。
良い戦略とは、以下の3つを満たします。
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診断: あらかじめ入念に練り上げられている。
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基本方針: (敵の)行動を予測し、対応策が立てられている。
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行動: 明確な意図を持って(味方の)行動をコーディネートしている。
1.診断
状況を診断し、取り組むべき課題を見極める 良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。
2.基本方針
診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。
良い基本方針は、目標やビジョンではないし、願望の表現でもない。 難局に立ち向かう方法を固め、他の選択肢を排除するのが基本方針である。
3.行動
ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。 すべての行動をコーディネートして方針を実行する。
戦略≠基本方針
良い戦略とは「何をやるか」を示すだけでなく、「なぜやるのか」「どうやるのか」を示すものであるべきです。
賢明な読者はすでにお気づきかもしれないが、私が「基本方針」と呼ぶものを戦略と称している企業がかなり多く見受けられる。 だが、戦略を基本方針で代用するのはまちがっている。診断を伴わない場合、どのような方針が可能か、比較検討して選ぶことができない。 また基本方針に沿って行動を起こしてみないと、その方針が現実に実行可能かどうかを確認することもできないだろう。
タイミングとリソース
全ての行動を統一する必要はない
あらゆる行動を全社的に統一する必要があるかと言われるとそうではないはずです。
業務内容がより具体化していく(専門化していく)について、それらを統一して管理するのではなく、あるタイミングでリソースを一気に集中するべきでしょう。
とは言え中央での戦略策定と行動の調整が、つねに良いというわけではない。 中央で指揮をとるより現場に任せたほうがうまくいくことは多い。 中央指令型のイニシアチブは現場の知識や経験や専門性と対立し、思わぬコストを強いられることがある。 一般に、一つのことに専門化するには、それ一筋に経験や知識を蓄積するのが王道である。 調整委員会や連絡会の類いに参加したことがある人ならよく知っているように、中央から指令を出して行動を一本化しようとすると、専門化を妨げることになりやすい。 したがって、「全社一丸となる」ような戦略は、得られるメリットが大きいときに限るのが賢いやり方である。 すぐれた組織は使い分けをわきまえており、何をやるにも全部門の行動を統率する、といった愚は犯さない。 これでは現場に活気がなくなってしまう。 通常の活動はそれぞれの部署に委ね、ここぞというときに行動を一点集中するのが賢い戦略であり、賢い組織である。
(戦略の)リソース
その会社が長い時間をかけて築き上げたり、独自の手法で創造したり発見したりしたリソースにこそ価値があります。
そのリソースを他社には簡単には真似できないため、強力な武器となります。
強力な武器を持つことで、きわめて単純な戦略をとることが可能になるでしょう。
リソースのタイミング
追加レバレッジのかけ方は、こんな感じにまとめた。これから時間方向のレバレッジについてまとめる。
不均衡点へのリソースの投下場所
状況を的確に見る目が、セブン-イレブンの隠れた強みを現実の競争優位に変えたのである。 適切な支点を選んでテコをあてがえば、力は何倍にもなる。 それは、自然に形成されたか人為的に作られたかを問わず、何らかの不均衡であることが多い。 ほんの小さな力をそこに加えるだけで、抑えられていた不満や蓄積されていた力を解放することができる。 たとえばニーズは高まっているのに、それに応える製品やサービスが提供されていないとすれば、それは一つの不均衡である。 また、開発された能力が十分に発揮されていないとか、他にも応用が期待されるケースなども、不均衡と言える。
選択と集中
戦略とは選択であるとか、意思決定であるとよく言われる。 「選択」や「意思決定」という言葉には、一連の選択肢の中からリーダーがどれか一つを選ぶようなイメージがある。 たしかに意思決定の理論書などには、可能な限りの選択肢を列挙し、それぞれの結果を評価し、成功率を分析したうえで決定を下す、といったことが書かれている。 これは適切なやり方かもしれないが、残念ながらリーダーにとってさほど役に立つとは言えない。 選択肢が明確にわかっているケースは、じつはめったにないからである。
これは自分の中では新しい概念でした。
実際の戦略とは、決定ではなく設計であり、選択肢の中から選ぶのではなく自らデザインする必要があるなと。
戦略立案は、どの車を買うか決めたり、工場の広さを決めたりする作業よりも、高性能の飛行機を設計する作業に似ている。
有効な戦略
次の四つのうちのどれかをめざす戦略が有効である。 ・競争優位を深める。 ・競争優位を拡げる。 ・優位な製品またはサービスに対する需要を増やす。 ・競争相手による模倣を阻むような隔離メカニズムを強化する。
ついつい自分たちの持てるカードを強化したり、増やしたりしがちであるため、3つ目の「需要を増やす」という考えはなるほどな🤔という感じです。