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「組織戦略の考え方」を読んだ


組織戦略の考え方 ――企業経営の健全性のために (ちくま新書)

1/

効率的で信頼性の高いアウトプットを生みだす組織の基本モデルは今でもやはり官僚制組織だということも確認しておきたい。 新しい組織設計上の工夫に意味がないと主張しているのではない。 ここで言いたいのは、いろいろな組織設計上の工夫は、「官僚制を打破して、官僚制を代替するべく」行なわれるのではなく、むしろ「官僚制に付加する形」で追加的に行なわれる、ということである。

2/

まず仕事の多くをプログラム化し、そのプログラムで対応できない例外をヒエラルキーによってその都度上司たちが考えて処理する。 これが組織設計の基本中の基本である。 より複雑な先進的組織は、すべてこの基本から出発し、この基本の上に様々な要素を付加していった結果として生まれるのである。 官僚制の基本モデルよりも複雑な組織は様々存在するが、官僚制の基本モデルを欠いた組織など組織として存続し得ないのである。

3/

企業組織の基本はまず官僚制であって、不確実性が高まるにつれて、官僚制に新たな工夫が付加されて組織が複雑化し、また人材育成のことを考えて垂直・水平両方向の分業を緩やかなものに若干追加的に修正していくのである。 官僚制という基本を機軸として離れて大規模な企業組織の運営など不可能なのである。

4/

まず第一に、何がボトルネック(あるいは制約条件) なのかを考え抜き、そのボトルネック(あるいは制約条件) を中心に全体最適を体系的に徹底して考え抜くというだ。 … 製造現場ばかりでなく、研究開発組織や本社スタッフ、中央省庁等々、ホワイトカラーが主体の組織でも、サービスや書類や意思決定を「生産」しているのであり、**その「生産プロセス」を徹底的に考え直す必要がある、**ということに多くの人々が気づいたのではなかろうか。

5/

こういった開発プロセス全体の中で、まずボトルネックと非ボトルネックを峻別しなければならない。 その上で全体最適を求めて、ボトルネックと非ボトルネックでは異なるミッションを追求するように方向づけなければならない。 この基本ができていないから、多くの企業で新製品開発の混乱が止まらないのである。  いまかりに、製品設計の基本コンセプトを考えることのできる優秀な技術者の思考時間がボトルネックだと仮定しよう。 この場合、まずこの優秀な技術者の基本コンセプトを考える時間を一分たりともムダにしてはならない。 これが基本である。

6/

マトリクス組織の下で、長期の蓄積と短期の市場適応のバランスを取るには次の三つのやり方がある。

**・職能部門長と事業部長とが腹を割って徹底的に話し合い、その都度、会社全体のことを考えてコンフリクト解消を行なう。

・両者のコンフリクトをトップが強権によって解消する。

・二人の上司に仕えるミドルが自分自身の頭の中で葛藤しながら適宜バランスをとっている。**

7/

問題を処理するのはヒトであって、組織構造ではない。 組織構造は、そのヒトの邪魔をすることはできるが、ヒトのやるべきことを代行してやってくれることはない

8/

決断は単なる意思決定ではない。 「何かを捨てて、何かを取る」とか、「今から一時的に悪化しても、長期的に再浮上する」とか、「特定の人には不利になるが、他の人には有利になるという不公平な結果をもたらすけれども、組織の長期的な成長のためには不可欠である」等々、大胆で不連続な側面を持った意思決定である。 決断は一部の人々に苦痛を強いたり、社員全員に一時的に苦労を要求したりすることになる。 簡単な意思決定なら、誰かが何かを決めたとしても、社内の不平不満が湧いて出てくることはあまりないであろう。 しかし、決断は、必ず社内公論がわき起こり、批判する人と称賛する人に社員がまっ二つに分かれる、というタイプのものなのである。 ゴー・サインを出せば出したで批判され、出さなければ出さないで批判される。 多くの人の運命を巻き込み、それゆえに多くの人々から注目と称賛と罵声を浴びる。 それが決断である。

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